ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)用安定剤とは?

塩ビ用安定剤

ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)の劣化メカニズムは、他の樹脂と異なります。主な劣化反応は、PVC中に存在する不安定なアリル位塩素がHClとして脱離し、生成したHClの触媒作用で連鎖的にHClが生じることにより起こります。よって、脱HClを抑制したり、生成したHClを補足する化合物が安定剤として使用されています。

 

塩ビは、可塑剤の配合比率で、硬さや柔軟性を自由に調整可能な樹脂であり、可塑剤の配合比率の低い(もしくは配合しない)ものを「硬質塩ビ」、配合比率の高いものを「軟質塩ビ」して取り扱っています。

 

可塑剤の配合比率が低いほど、加工温度は高温が必要となりますが、劣化メカニズムは可塑剤の配合比率に寄らず同じです。

 

〇 硬質塩ビ用安定剤
鉛系安定剤やスズ系安定剤が主流でしたが、鉛金属、有機錫の人体への悪影響が懸念される現在では、代替として、カルシウムー亜鉛(Ca-Zn)系金属石鹸にエポキシ樹脂などの加工助剤を組み合わせた安定剤が使用されることが多いです。

 

〇 軟質用塩ビ安定剤
かつては、優れた性能を有したバリウムーカドミウム(Ba-Cd)系安定剤が幅広く使用されていました、カドミウムの環境問題で非カドミウム系安定剤に移行し、現在では、バリウムー亜鉛(Ba-Zn)系安定剤、カルシウムー亜鉛(Ca-Zn)系安定剤が主流となっています。

 


塩ビ用安定剤の相乗効果・拮抗効果


安定剤の組み合わせにより、相乗効果を発揮するもの、拮抗効果を示し悪影響を及ぼすものがあります。

 

〇 相乗効果を示す組み合わせ
・Zn石鹸とBa,Ca石鹸
・金属石鹸とホスファイト

 

〇 拮抗作用を示す組み合わせ
・鉛系安定剤と含硫黄化合物
→ 黒色の硫化鉛を生成する