「インボイス制度」とは?

「インボイス制度」とは税金計算のベースとなる証票制度で、正式名称は「適格請求書等保存方式」といいます。

【「インボイス」:適用税率や税額など法定されている記載事項が記載された書類のこと。】

「インボイス制度」は、2016年11月末に可決・成立した税制改正関連法に基づき、2023年10月より実施される予定です。

具体的には、下記の要項を記した請求書や納品書を交付・保存する制度で、課税事業者である取引相手の求めに対し、適格請求書の交付や保存の義務が生じるようになります。

① 適格請求書発行事業者の、氏名または名称および登録番号
② 取引年月日
③ 取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨)
④ 税率ごとに合計した対価の額および適用税率
⑤ 消費税額
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

 

課税事業者は相手方から求められた場合「インボイス」の発行が義務付けられており、また、自ら発行した「インボイス」の副本の保存が義務付けられます。「インボイス」に事業者登録番号・軽減税率の対象品目がある場合はその旨・適用税率・税額の記載が義務付けられています。


これまでは、日本では消費税額の納付計算には「帳簿保存方式」が採用されており、取引の相手方が発行した請求書等の客観的証拠書類の保存を仕入税額控除の要件としていましたが、「適格請求書等保存方式(インボイス方式)」への変更されることになりました。

 

「インボイス方式」とは、簡単にいうと、課税事業者が発行する請求書や納品書に記載された税額のみを控除することができる、「仕入税額控除」の方式のことです。


インボイス方式へ移行する背景として大きく次の2点が挙げられます。

① 軽減税率への対応

軽減税率導入以前では、全品目で消費税が一律だったため、適用する税率を表記する必要がなかったため「帳簿保存方式」では請求書等に適用税率・税額を記載することは義務付けられていませんでした。なので単純に仕入れと売り上げが分かれば、その額に消費税率を乗じて消費税額を簡単に計算することができました。
しかし、2019年10月1日以降の新消費税率適用後は、一部軽減税率が適用される品目があり、8%と10%の2種類の消費税率が混在することになり、仕入税額控除額を計算するためには、商品ごとに適用税率・税額が分かる書類がなければ、不正や記載ミスが発生する恐れがあると考えられています。

② 益税の排除

【「益税」:顧客が支払った消費税のうち、納税されずに合法的に事業者の手元に残る部分。】

「益税」が発生する要因のひとつとして、中小事業者の納税事務負担を軽減するための「事業者免税点制度」が挙げられます。

【「事業者免税点制度」:一定の要件を満たすと消費税を納税する義務が免除され「免税事業者」になれる制度。】

「免税事業者」は消費税の納税義務が免除されますが、顧客からは消費税を受け取っているので、この消費税額は免除事業者の益税になってしまいます。

また、課税事業者同様、免税事業者から仕入れる場合も、消費税法上はその金額には消費税が含まれているとみなして消費税納税額を計算します。本来なら免税事業者からの仕入にかかる消費税は0円で計算されなければおかしいのですが、これにより、仕入税額控除額が実際より多くなり、益税が発生しています。

(例)
◇ 課税事業者から商品仕入(インボイス有り)

商品仕入 500 円(消費税:40 円)
商品売上 750 円(消費税:60 円)
【60円 - 40円 = 20円(納付税額)】


◇ 免税事業者からの商品仕入(インボイス無し)

商品仕入 500円(消費税:0円)※免税
商品売上 750円(消費税:60円)
【60円 - 0円 = 60円(納付税額)】
つまり今までは、免税事業者から商品を仕入れていた場合、納税するべきお金(この場合60 - 20 = 40円)が事業者の懐に収まっていました。


一斉にインボイス方式へ切り替えるのは混乱をきたすことから、経過処置が設けられ軽減税率が導入される2019年10月から、インボイス方式が導入される2023年10月までの4年間は、「区分記載請求書等保存方式」が適用されます。

「区分記載請求書等保存方式」では、課税事業者と免税事業者の区別はされません。
そのため、請求書等に登録番号の記載は求められませんが、軽減税率に対応するため、現行制度での請求書等への記載事項に加えて①軽減税率の対象品目である旨、②税率ごとに区分して合計した対価の額(税込)の事項の記載が必要となります。