【イチロー】引退会見全文

【2019年3月21日イチロー引退会見】 

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こんなにいるの? ビックリするわ。そうですか。こんな遅い時間にお集まり頂いて有難う御座います。

 

今日のゲームを最後に、日本で9年、アメリカで19年目に突入した所だったんですけど、現役生活に終止符を打ち、引退する事となりました。

最後にこのユニフォームを着て、この日を迎えられた事を大変幸せに感じています。この28年を振り返るには、あまりにも長い時間だったので、ここで一つ一つ振り返ることは難しいこともあって。

これまで応援して頂いた方々への感謝への思い、そして球団関係者、チームメイトに感謝申し上げて、みなさんからの質問があれば、出来る限りお答えしたいと思っています。有難う御座いました。

 
【現役としての選手生活に終止符を打つタイミングと理由とはなんですか?】

タイミングはキャンプ終盤ですね。日本に戻ってくる何日前ですかね。

何日前とはハッキリとお伝え出来ないですけど、終盤に入った時です。

元々日本でプレーする、東京ドームでプレーする所までが契約上の予定だったという事であったんですけど、キャンプ終盤でも結果を出せずに、それを覆す事が出来なかったという事です。

 

【決断に後悔や思い残したところはありますか?】

今日の球場の出来事、あんなもの見せられたら後悔などあろう筈がありません。もちろん、もっと出来た事はあると思いますけど、結果を残す為に自分なりに重ねてきた事、他人より頑張ったという事はとても言えないですけど、自分なりに頑張ってきたとはハッキリと言えるので。

これを重ねてきて、重ねる事でしか後悔を生まないという事は出来ないのではないかなと思います。

 

【子供達にメッセージをお願いします。】

シンプルだな。メッセージかー。苦手なのだな、僕が。

野球だけでなくてもいいんですよね、始めるものは。自分が熱中できるもの、夢中になれるものを見つければそれに向かってエネルギーを注げるので、そういうものを早く見つけて欲しいと思います。

それが見つかれば、自分の前に立ちはだかる壁にも、壁に向かっていく事が出来ると思うんです。それが見つけられないと、壁が出てくると諦めてしまうという事があると思うので。いろんなことにトライして。自分に向くか向かないかよりも、自分の好きなものを見つけて欲しいなと思います。

 

【今思い返して、印象に残っているシーンは?】

今日を除いてですよね。この後、時間がたったら今日が一番真っ先に浮かぶのは間違いないと思います。それを除くとすれば、いろいろな記録に立ち向かってきたんですけど、そういうものは大したことではないというか。

自分にとって、それを目指してやってきたんですけど、いずれそれは僕ら後輩が、先輩達の記録を抜いていくというのはしなくてはいけないことでもあると思うんですけど、そのことにそれほど大きな意味はないというか。

そんな風に今日の瞬間を体験すると、すごく小さく見えてしまうんですよね。その点で、例えば、分かりやすい10年200本打ったとか、MVPを獲ったとか、オールスターでどうたらというのは、本当に小さな事に過ぎないと思います。

今日の舞台に立てたという事は、去年の5月以降、ゲームに出られない状況になって。その後にチームと一緒に練習を続けてきた訳ですけど、それを最後まで成し遂げられなければ、今日のこの日は無かったと思うんですよね。

今まで残してきた記録はいずれ誰か抜いていくとは思うんですけど、去年の5月からシーズン最後の日まで、あの日々はひょっとしたら誰にも出来ない事かもしれない。ささやかな誇りを生んだ日々であったと思うんですよね。去年の話だから近いということもあるんですけど、どの記録よりも自分の中では、ほんの少しだけ誇りを持てた事かなと思います。

 

【ファンの存在はイチロー選手にとってどうでしたか?】

ゲーム中にあんな事が起こるとはとても想像していなかったですけど、それが実際に起きて、19年目のシーズンをアメリカで迎えていたんですけど、日本のファンの方の熱量というのは普段感じる事は難しいんですよね。

久しぶりに東京ドームに来て、ゲームは基本的に静かに進んでいくんですけど、なんとなく印象として日本人は表現するのが苦手というか。

そんな印象があったんですけど、それが完全に覆りましたね。内側にある熱い思いが確実にあるという事、それを表現したという時のその迫力というものが、今まで想像出来なかった事です。

ですから、これは最も特別な瞬間になりますけど、ある時までは自分のためにプレーする事がチームの為になるし、見てくれる人も喜んでくれるかなと思っていたんですけど、ニューヨークに行った後ぐらいからですかね。人に喜んでもらえる事が一番の喜びに変わってきた。

その点で、ファンの方の存在無しには、自分のエネルギーは全く生まれないと思います。え、可笑しな事言ってます、僕? 大丈夫ですか?

 

【イチロー選手が貫いたものとは何ですか?】

野球の事を愛した事だと思います。これは変わる事は無かったですね。可笑しな事言ってます、僕? 大丈夫?

 

【ケン・グリフィーJr.が肩の力を抜いた時に違う野球が見えて楽しくなるという話をされたんですけど、そういう瞬間はあったのでしょうか?】

 プロ野球生活の中ですか?

 

【はい。】

 無いですね。これは無いです。

ただ、子供の頃からプロ野球選手になる事が夢で、それが叶って。最初の2年、18、19の頃は1軍に行ったり来たり。「行ったり来たり」っておかしい? 「行ったり、行かなかったり?」 「行ったり来たり」っていつも行ってるみたいだね。「1軍に行ったり、2軍に行ったり」そうか、これが正しいか。そういう状態でやっている野球は結構楽しかったんですよ。

1994年、3年目ですね。仰木監督と出会って、レギュラーで初めて使って頂いた訳ですけども。この年までですね、楽しかったのは。あとはその頃から急激に番付を上げられちゃって、それはしんどかったです。

やっぱり力以上の評価をされるというのはとても苦しいですよね。だから、そこからは純粋に楽しいなんていうのは、遣り甲斐があって達成感を味わう事、満足感を味わう事は沢山ありました。じゃあ、楽しいかというとそれとは違うんですよね。

でもそういう時間を過ごしてきて、将来はまた楽しい野球をやりたいなと。これは皮肉なもので、プロ野球選手になりたいという夢が叶った後は、そうじゃない野球をまた夢見ている自分がある時から存在したんですね。

でもこれは、中途半端にプロ野球生活を過ごした人間には待っていないもの。例えば草野球ですよね。やっぱりプロ野球でそれなりに苦しんだ人間でないと、草野球を楽しめないのではないかと思うので。

これからは、そんな野球をやってみたいなという思いですね。可笑しなことを言ってます、僕? 大丈夫?

 

【開幕シリーズを大きなギフトと仰っていました。それが私たちの方が大きなギフトを貰ったような気がするんです。】

 そんなアナウンサーっぽい事を言わないでくださいよ。

 

【イチロー選手は、これからどんなギフトをくださるんでしょうか?】

無いですよ。そんな無茶言わないで下さいよ。でも、これは本当に大きなギフトで、去年、3月の頭にマリナーズからオファーを頂いて、それから今日までの流れがあるんですけれども、あそこで終わってても全然可笑しくないですからね。去年の春までで終わっていても全く可笑しくない状況ですから。今、この状況が信じられないですよ。

あの時考えていたのは、自分がオフの間、アメリカでプレーするまでに準備をする場所というのは神戸の球場なんですけど、寒い時期に練習するので、凹むんですよね。やっぱ心が折れるんですよ。

そんな時もいつも仲間に支えられてやってきたんですけど、最後は今まで自分なりに訓練を重ねてきた神戸の球場で、ひっそりと終わるのかなあと、あの当時想像していたので、夢みたいですよ。こんなの。これも大きなギフトです。

質問に答えていないですけど、僕からのギフトは無いです。

 

【涙がなく笑顔が多かったというのは、この開幕シリーズが楽しかったということでしょうか?】

純粋に楽しいという事ではないんですよね。やっぱり、誰かの思いを背負うというのは、それなりに重い事なので。そうやって一打席一打席立つことって簡単ではないですね。だから、すごく疲れました。

やっぱり一本ヒットを打ちたかったし、応えたいって当然ですよね、それは。僕には感情が無いって思っている人いるみたいですけど、あるんですよ。意外とあるんですよ。結果を残して最後を迎えたら一番いいなと思っていたんですけど、それでもあんな風に球場に残ってくれて。

まあ、そうしないですけど、死んでもいいという気持ちはこういうことなんだろうなと。死なないですけど。そういう表現をする時ってこういう時なのかなと思います。

 

【最低50歳まで現役と仰っていましたが、日本のプロ野球に戻るという選択肢は無かったのでしょうか?】

無かったですね。

 

【どうしてでしょう?】

それはここでは言えないなあ。最低50歳までって本当に思っていたし、それは叶わずで、有言不実行な男になってしまった訳ですし。

その表現をしてこなかったらここまで出来なかったかもなという思いもあります。だから、言葉にする事、難しいかもしれないけど言葉にして表現するというのは、目標に近づく一つの方法ではないかなと思います。

 

【野球に費やしてきた膨大な時間、これからそういう膨大な時間とどういう風に付き合いますか?】

これからの膨大な時間という事ですか?それとも、これからの膨大な時間とどう付き合うかということですか?

 

【これからの膨大な時間をということです。】

ちょっと今は分からないですね。ただ、多分明日もトレーニングをしていますよ。それは変わらないでしょうね。僕はじっとしていられないから。動き回っているでしょうね。だからゆっくりしたいとか全然無いですよ。全然無い。多分動き回ってます。

 

【イチロー選手の生き様でファンの方に伝わっていたら嬉しいという事はありますか?】

生き様というのは僕にはよく分からないですけど、生き方と考えれば、先程もお話しましたけれども、人より頑張る事なんてとても出来ないんですよね。

あくまで測りは自分の中にある。それで自分なりにその測りを使いながら、自分の限界を見ながらちょっと超えていくという事を繰り返していく。そうすると、いつの間にかこんな自分になっているんだという状態になって。

だから少しずつの積み重ねが、それでしか自分を超えていけないと思うんですよね。一気に高みに行こうとすると、今の自分の状態とギャップがありすぎて、それは続けられないと僕は考えているので。地道に進むしかない。進むというか、進むだけではないですね。後退もしながら、あるときは後退しかしない時期もあると思うので。でも、自分がやると決めた事を信じてやっていく。

でも、それが正解とは限らない訳ですよね。間違った事を続けてしまっている事もあるんですけど。でも、そうやって遠回りをする事でしか本当の自分に出会えないというか、そんな気がしているので。

そうやって自分なりに重ねてきたことを、今日のゲーム後のファンの方の気持ちですよね。ひょっとしたらそんな所を見て頂いていたのかなと。それは嬉しかったです。そうであれば嬉しいし、そうじゃなくても嬉しいです。あれは。

 

【シンプルに聞きますが、現役選手を終えたら、監督や指導者になったり、タレントになったりしますか?】

あんまりシンプルじゃないですね。

 

【イチロー選手は、何になるんですか?】

何になるんだろうね。そもそも「カタカナのイチロー」ってどうなるんですかね?「元カタカナのイチロー」みたいになるんですかね?あれ、どうなんだろ?

「元イチロー」って変だよね。いやイチローだし、僕。音が「一朗」だから。書く時どうなるのかな?どうしよっか?何になる。うーん……。

でも監督は絶対無理ですよ。絶対が付きますよ。人望が無い。本当に。人望が無いですよ、僕。

 

【そうでもないと思いますけど】

いやあ、無理ですね。それぐらいの判断能力は備えているので。ただ、どうでしょうね。

ま、プロの選手、プロの世界というよりも、アマチュアとプロの壁というのが日本は特殊な形で存在しているので。今日をもってどうなんですかね。そういうルールって。どうなんだろうか。今までややこしいじゃないですか。

例えば極端に言えば、自分に子供がいたとして、高校生であるとすると、教えられなかったりというルールですよね。そういうのって変な感じじゃないですか。

今日をもって元イチローになるので、それは小さな子供なのか、中学生になのか、高校生になのか、大学生になるのかはわからないですけど、そこには興味がありますね。

 

【先ほど引退を決めたのがキャンプの終盤という話がありましたけど、それ以前に引退を考えたことは?】

引退というか、クビになるんじゃないかはいつもありましたね。ニューヨークに行ってからは毎日そんな感じです。マイアミもそうでしたけど。

ニューヨークって皆さんご存知かどうか分からないですけど、特殊な場所です。マイアミも違った意味で特殊な場所です。

毎日そんなメンタリティーで過ごしていたんですね。クビになる時は正にその時だろうと思っていたので、そんなのしょちゅうしょっちゅうありました。

 

【今回、引退を決意した理由とは?】

マリナーズ以外に行く気持ちは無かったという事は大きい。去年、シアトルに戻して頂いて本当に嬉しかった。

先ほどキャンプ前のオファーがある前の話をしましたけど、その後、5月にゲームに出られなくなる。あの時もタイミングで可笑しく無いんですよね。

でも、この春に向けてまだ可能性があると伝えられていたので、そこも自分なりに頑張ってこられたということだと思うんですけど。質問なんでしたっけ?

 

【引退を決めた理由は?】

もう答えちゃったね。

 

【今日の試合でベンチに戻る際に菊池雄星選手が号泣していました。】

号泣中の号泣でした、アイツ。ビックリしました。それ見てこっちは笑ってましたけどね。

 

【抱擁された時にどんな会話を?】

それはプライベートなんで。それは雄星がそれをお伝えするのは構わないですけど、僕がお伝えする事ではないですね。

 

【秘密ですか?】

それはそうでしょう。二人の会話だから。しかも、僕から声を掛けているので。それをここで僕がこんなことを言いましたって。バカですよね。絶対に信頼されないもんね。それは駄目です。

 

【アメリカのファンへのメッセージは?】

アメリカのファンの方々は、最初は厳しかったですよ。最初の2001年のキャンプなんかは「日本に帰れ」としょっちゅう言われましたよ。

だけど、結果を残した後の敬意というのは、これは評価するのかどうかわからないけど、手の平を返したという言い方もできるので、ただ、言葉ではなくて行動で示した時の敬意の示し方というのは、その迫力はあるなという印象ですね。

なかなか入れて貰えないんですけど、入れてもらった後、認めてもらった後はすごく近くなるという印象で、ガッチリ関係が出来上がる。シアトルのファンとはそれができた。僕の勝手な印象ですけど。

ニューヨークというのは厳しい所ですよね。でも、やればどのエリアよりも熱い思いがある。マイアミというのは、ラテンの文化が強い印象で、熱(アツ)はそれほど無いんですけど、結果を残さなかったら人は絶対に来てくれない。そういう場所でしたね。

それぞれの場所で関係を築けたような。特徴がそれぞれありましたけど。アメリカは広いなと。ファンの人たちの特徴を見るだけでアメリカは広いなという印象ですけど。

でもやっぱり、最後にシアトルのユニフォームを着て、セーフィコ・フィールドでは無くなってしまいましたけど、姿をお見せできなくて、それは申し訳ない思いがあります。

ユニークなTシャツに「もう限界」「もう無理」とか書いていますが、心情が表れているんでしょうか。

そこは言うと急にやぼったくなるから、言わない方がいいんだよね。それは観る側の解釈だから。そう捉えれば、そう捉えることもできないし。全然関係ない可能性もあるし。それでいいんじゃないですか。

 

【好きに楽しんでいただきたい?】

だってそういうものでしょう。いちいち言うと野暮ったいもんね。

 

【言わない方が粋であると?】

粋とは自分では言えないけど。言うと無粋である事は間違いないですよね。

 

【24時間を野球に使ってきたと仰っていますが、それを支えてきたのは弓子夫人だと思いますが、敢えて今日は聞かせて下さい。】

いやあ、頑張ってくれましたね。一番頑張ってくれたと思います。

僕はアメリカで結局3089本のヒットを打ったわけですけど、妻は、ゲーム前にホームの時はおにぎりを食べるんですね。妻が握ってくれたおにぎりを球場に持っていって行って食べるんですけど、それの数が2800ぐらいだったんですよね。3000いきたかったみたいですね。そこは3000個握らせてあげたかったなと思います。

妻もそうですけど、とにかく頑張ってくれました。僕はゆっくりする気はないけど、妻にはゆっくりしてほしいと思います。

それと一弓ですね。一弓というのはご存知ない方もいらっしゃると思いますけど、我が家の愛犬ですね。柴犬です。現在17歳と何カ月かな。7カ月かな。

今年で18歳になろうかという柴犬なんですけど、さすがにおじいちゃんになってきて、毎日フラフラなんですけど、懸命に生きているんですよね。その姿を見ていたら、それは俺がんばらなきゃなと。これはジョークとかではなくて、本当にそう思いました。

懸命に生きる姿。2001年に生まれて、2002年にシアトルの我が家に来たんですけど、まさか最後まで一緒に、僕が現役を終える時まで一緒に過ごせるとは思っていなかったので、大変感慨深いですよね。一弓の姿は。ほんと、妻と一弓には感謝の思いしかないですね。

 

【3月の終盤に引退を決めたのは、打席内の感覚の変化というのはありましたか?】

いる? それここで?

 

【ぜひ。】

裏で話すわ。裏で。

 

【今まで一番考え抜いて決断したことは?】

これは順番を付けられないですね。それぞれが一番だと思います。

ただ、アメリカでプレーするために、今とは違う形のポスティングシステムだったんですけど、自分の思いだけでは叶わないので、当然球団からの了承がないと行けないんですね。

その時に、誰をこちら側、こちら側っていうと敵・味方みたいで可笑しいんですけど。球団にいる誰かを口説かないといけない、説得しないといけない。その時に一番に思い浮かんだのが、仰木監督ですね。

その何年か前からアメリカでプレーしたいという思いは伝えていた事もあったんですけど、仰木監督だったらおいしいご飯でお酒を飲ませたら。飲ませたらっていうのは敢えて飲ませたらと言ってますけど、これはうまくいくんじゃないかと思ったら、まんまとうまくいって。

これが無かったら何も始まらなかったので。口説く相手に仰木監督を選んだのは大きかったなと思いますね。

駄目だ駄目だと仰っていたものが、お酒でこんなに変わるんだと思って。お酒の力をまざまざと見ましたし。やっぱり洒落た人だったなと思いますね。仰木監督から学んだものは計り知れないと思います。

 

【WBCで優勝した日の会見と日付が一緒ですが、運命的なものを感じますか?】

聞かされればそう思う事も出来るという程度ですかね。

 

【一番我慢したものは何ですか?】

難しい質問だなあ。僕、我慢できない人なんですよ。楽なこと、楽なことを重ねているという感じなんですよね。自分が出来る事を、やりたいことを重ねているので我慢の感覚が無いんですけど。

とにかく体を動かしたくてしょうがないので、こんなに動かしちゃ駄目だっていう事で、体を動かすことを我慢するというのは沢山はありました。それ以外はストレスが無いように行動してきたつもりなので。

家では妻が料理を色々考えて作ってくれますけど、ロードは何でもいい訳ですよね。無茶苦茶ですよ。ロードの食生活なんて。結局我慢出来ないからそうなっちゃうんですけど、そんな感じなんです。今聞かれたような主旨の我慢は、思い当たらないですね。可笑しなこと言ってます、僕?

 

【台湾にはイチローさんのファンがいっぱいです。台湾に行きたいということはありますか?】

チェンが元気か知りたいですね。チェン、チームメイトでしたから。元気でやってますか?それは何よりです。

今のところ(台湾に行く)予定は無いんですけれども、以前に行った事あるんですよ。一度。とても優しい印象でしたね。心が優しくていいなと思いました。有難う御座います。

 

【イチロー選手が後輩たちに託したいものは何ですか?】

雄星のデビューの日に僕は引退を迎えたというのは、何かいいなと思っていて。「ちゃんとやれよ」という思いですね。

短い時間でしたけどすごくいい子で。いろんな選手を見てきたんですけど、左投手の先発って変わっている子が多いんですよ。本当に。天才肌が多いとも言える。アメリカでもまあ多い。こんなにいい子いるのかなって感じですよ、今日まで。

でも、キャンプ地から日本に飛行機で移動してくるわけですけど、チームはドレスコードで服装のルールが、黒のジャージのセットアップでOK、長旅なのでできるだけ楽にという配慮なんですけど、「雄星、俺たちどうする?」って・・

アリゾナはいいんだけども、日本に着いた時にさすがにジャージは駄目だろうって二人で話をしていたんですね。「そうですよね、イチローさんはどうするんですか?」って・・僕はまあ、中はTシャツだけどセットアップでいちおうジャケットを着ているようにしようかなと。「じゃあ僕もそうします」って言うんですよ。

で、キャンプ地を起つ時のバスの中で、みんなも僕も黒のジャージのセットアップでバスに乗り込んできて。

それで雄星と席が近かったので、「雄星、やっぱりこれダメだよな。日本に着いた時にメジャーリーガー、これダメだろ」ってバスの中でも言ってたんですよ。「そうですよね」って。そう言ってたら、まさか羽田着いた時にアイツ、ジャージでしたからね。イヤ、こいつ大物だなって。ぶったまげました。

本人にまだ聞いてないですけど、その真相は。何があったのか分からないですけど。やっぱり左投手は変わったヤツが多いなと思いました。スケール感は出てました。頑張ってほしいです。

翔平はちゃんとケガを治して、物理的にも大きいわけですし、アメリカの選手と全くサイズ的にも劣らない。しかもあのサイズであの機敏な動きができるというのはいないですからね。それだけで。世界一の選手にならなきゃいけないですよ。

 

【野球の魅力はどんなものでしょうか?また、イチロー選手がいない野球をどう楽しめばいいでしょうか?】

団体競技なんですけど、個人競技というところですかね。これが野球の面白い所だと思います。チームが勝てばそれでいいかというと、全然そんなことは無いですよね。個人として結果を残さないと、生きていく事は出来ないですよね。

本来はチームとして勝っていればいいかというと、チームとしてのクオリティは高いのでそれでいいかというと、決してそうではない。その厳しさが面白いところかなと。面白いというか、魅力であることは間違いないですね。あとは同じ瞬間がない。必ずどの瞬間も違うということ。これは飽きがこないですよね。

二つ目はどうやって楽しんだらいいかですか。2001年にアメリカに来てから2019年現在の野球は、まったく違うものになりました。頭を使わなくてもできてしまう野球になりつつあるような。選手も現場にいる人たちもみんな感じていることだと思うんですけど、これがどう変化していくか。次の5年、10年、しばらくはこの流れは止まらないと思いますけど。

本来は野球というのは・・ダメだな、これを言うと問題になりそうだな・・うーん、頭使わないとできない競技なんですよ本来は。でもそうじゃなくなってきているというのがどうも気持ち悪くて。

ベースボール、野球の発祥はアメリカですから、その野球が現状そうなってきているということに危機感を持っている人っていうのがけっこういると思うんですよね。

だから、日本の野球がアメリカの野球に追従する必要なんてまったくなくて、日本の野球は頭を使う面白い野球であってほしいなと思います。アメリカのこの流れは止まらないので。

せめて日本の野球は決して変わってはいけないこと、大切にしなければいけないことを大切にしてほしいなと思います。

 

【今日の打席で1年目のゲームで思い出したことはあったんでしょうか?】

長い質問に対して大変失礼なんですけど、ないですね。

 

【子供の頃からの夢であるプロ野球選手になるという夢を叶えて、今、何を得たと思いますか?】

成功かどうかってよく分からないですよね。じゃあどこから成功で、そうじゃないのかって、まったく僕には判断出来ない。だから成功という言葉は嫌いなんですけど。

メジャーリーグに挑戦するということは、大変な勇気だと思うんですけど、でも成功、ここではあえて成功と表現しますけど、成功すると思うからやってみたい。それができないと思うから行かないという判断基準では、後悔をうむだろうなと思います。

できると思うから挑戦するのではなくて、やりたいと思えば挑戦すればいい。その時にどんな結果が出ようとも後悔はないと思うんですよね。

じゃあ、自分なりの成功を勝ち取ったところで達成感があるのかというと、それは僕には疑問なので。基本的には、やりたいと思ったことをやっていきたいですよね。

 

【何を得ましたか?】

こんなものかな・・という感覚ですかね。それは200本はもっと打ちたかったし、できると思ったし、1年目にチームは116勝して、その次の2年間も93勝して、勝つのってそんなに難しいことじゃないなってその3年は思ってたんですけど大変なことです。勝利するというのは。この感覚を得たことは大きいかもしれないですね。

 

【ユニフォームを脱ぐことで神戸に恩返しをしたいという気持ちはありますか?】

神戸は特別な街です、僕にとって。恩返しか・・恩返しって何をすることなんですかね?

僕は選手として続けることでしかそれはできないんじゃないかなと考えていたこともあって、できるだけ長く現役を続けていきたいと思っていたこともあるんですね。

神戸に恩返し、うーん・・税金を少しでも払えるように頑張ります。

 

【ご自身の経験を振り返って、もっとこんな制度であればメジャーに挑戦したかった、あるいは日本のプロ野球に残ったという事はありますか?】

制度に関しては詳しくないんですけど、日本で基礎を作る。自分が将来MLBで将来活躍する為の礎を作るという考え方であれば、出来るだけ早くというのはわかりますけど、日本の野球で鍛えられることは沢山あるんですね。だから、制度だけに目を向けるのはフェアじゃないかなと思いますけどね。

 

【日本の野球で鍛えられたことは何ですか?】

基本的な基礎の動きって、おそらくメジャーリーグの選手より中学生レベルの選手の方がうまい可能性がありますよ。チームとしての連携もあるじゃないですか。そんなの言わなくてもできますからね、日本の野球では。

でもこちらではなかなかそこは。個人としてのポテンシャル、運動能力は高いですけど、そこにはかなり苦しみましたよ。苦しんで諦めましたよ。

 

【大谷選手と対戦したかったという気持ちはありますか?また、大谷選手に期待することは何ですか?】

先程もお伝えしましたけど、世界一の選手にならなきゃいけない選手ですよ。そう考えています。

翔平との対戦、残念でしたけど、出来れば僕が投手で翔平が打者でやりたかったんですよ。それは誤解なきよう。

 

【大谷選手は今後、どのような選手になっていくと思いますか?】

なっていくかどうか・・そこは占い師に聞いてもらわないと分からないけどね。

投げることも打つこともやるのであれば、僕は1シーズンごとに投手、次のシーズンは打者としてサイ・ヤング(賞)と本塁打王をとったら。そんなことなんて、考えることすら出来ないですよ。

でも、翔平はその想像をさせるじゃないですか。この時点で明らかに人とは明らかに違う選手だと思う。その二刀流は面白いと思うんですよね。なんか、納得いってない表情ですけど。

投手として20勝するシーズンがあって、その翌年に50本打ってMVP取ったら化け物ですよね。でも、それが想像できなくはないですからね。そう思ってますよ。

 

【あるアスリートの方に伺ったのですが、イチロー選手が「野球選手じゃなくなった自分が想像できない。イヤだ」とおっしゃったと聞きましたが?】

イヤだって言わないと思いますけどね。

 

【野球選手ではない自分を想像していかがですか?】

違う野球選手になってますよ。あれ、この話さっきしましたよね。おなか減ってきて集中力が切れてきちゃって・・さっき何を話したか記憶が。

さっき草野球の話をしましたよね。だから、そっちでいずれ、楽しくてやっていると思うんですけど、そうするときっと草野球を極めたいと思うんですよね。真剣に草野球を極める野球選手になっているんじゃないですか、結局。

 

おなか減ってきた。結構やってないですか。いま、時間どれっくらい? 1時間20分? 今日はとことん付き合おうと思ったんですけどね。おなか減ってきちゃった。

 

【プロ野球人生で誇れることは何ですか?】

これ先程お話しましたね。小林くんも集中力切れてきているんじゃないの? 完全にその話をしたよね。それで1問減ってしまうんだから。

 

【イチロー選手の小学校の卒業文集が有名で、「僕の夢は一流のプロ野球選手になることです」と冒頭に書いていますが、(子供時代の自分に)どんな言葉をかけたいですか】

お前、契約金で1億ももらえないよって。夢は大きくとは言いますけど、なかなか難しいですよ。ドラ1の1億って掲げてましたけど、全然遠く及ばなかったですから。

ある意味では挫折ですよね。それは。こんな終わり方でいいのかな。なんか、最後はキュッとしたいよね。

 

【昨年、マリナーズに戻りましたけれども、その前のマリナーズ時代、「孤独を感じながらプレーをしている」と話していました。その孤独感はずっと感じながらプレーしていたんでしょうか?それとも、前の孤独感とは違ったものがあったのでしょうか?】

現在はそれは全く無いです。今日の段階で全く無いです。

それとは少し違うかもしれないですけど、アメリカに来て、メジャーリーグに来て、外国人になったこと、アメリカでは僕は外国人ですから。

このことは、外国人になった事で人の心を慮ったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れたんですよね。この体験というのは、本を読んだり、情報を取ることができたとしても、体験しないと自分の中からは生まれないので。

孤独を感じて苦しんだ事、多々ありました。ありましたけど、その体験は未来の自分にとって大きな支えになるんだろうと今は思います。

だから、辛いこと、しんどいことから逃げたいというのは当然の事なんですけど、でもエネルギーのある元気のある時にそれに立ち向かっていく。そのことはすごく人として重要な事ではないかと感じています。お腹すいた。しまったね、最後。

 

いやあ、長い時間有難う御座いました。眠いでしょう、みなさんも?じゃあ、そろそろ帰りますか。